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#ほのほ

  • 執筆者の写真: toshiki tobo
    toshiki tobo
  • 2022年10月14日
  • 読了時間: 3分

日曜の朝、大学生ぐらいの女性が真横を風のように通り過ぎて行った。ロングスカートが盛大に風になびき、小雨降る道を颯爽と去って行った。勇ましいその後ろ姿はまるで馬に乗った戦国武将のようだった。かっこよかった。


立ち漕ぎをしたのは、どのくらい前のことだっただろう。それどころかもう何年も自転車に乗っていない。僕もあの自転車に乗ったのならなんだってできそうな気がして、しばらくの間あの自転車に跨ったあの子をうらやましく思った。これもまたひとつの希望だと思った。


秋になるとスピッツが聴きたくなる。今年も自然とその流れになった。とっ散らかったメンヘラがポップに弾け飛ぶスピッツの曲は、時に共感し難く、時にガシッと心を鷲掴みにする。愛だの、恋だの、会いたいだの、会えないだの、そんなことにうつつを抜かしては一喜一憂して忙しい。本当に、忙しい。


アルバム「スーベニア」の中に「ほのほ」という曲がある。「炎」のことを指した曲。当初はこの言葉がアルバムのタイトルになる案もあったらしいが、「らしくない」とのことで、廃案になったらしい。あくまで、らしい。


かわいいふりして悍ましいメンヘラソングなこの歌はまさに「炎」で、恋心が大爆発してもはや大炎上中のホラーソング。そして、とてもよい曲。文脈を無視して絶賛する。これが恋かあ、などと思ったり思わなかったりなどをする。


そんな秋スピッツ事情を友人に話したら、共感の嵐が日本列島を更地にする勢いで吹きすさんだ。季節の移ろいだとか、心の機微だとかに、疎いというか、我関せず我動じず、なタイプな人だと思っていただけにとても驚き「嘘つけ」と口走ってしまった。


秋スピッツ事情が入口となり、その友人が少し前に失恋をしたこと、ひどく落ち込んでたくさん涙を流したこと、日が短くなってきた今のこの時期を大層嫌がっていることを知った。そして、僕が友人に思っていたこととまったく同じことを友人も抱いていたことをその時はじめて知った。僕を叶姉妹のような浮世離れした心の持ち主だと思っていたらしい。イツモシヅカニワラッテヰル、などと思っていたと知り「そうそう、そうなんだよね~」などと冗談を言っては、2秒でかき消した。


次第にくよくよしはじめた友人がなんとも可哀そうになり、やむなしと腹をくくりアルコール摂取を勧めた。吞兵衛の友人はみるみるうちに生気を取り戻し、僕は隣でケラケラ笑うだけのガラクタとなった。


「言うならば、分かりやすい、ボケをしろ。」

関西出身の友人にお洒落な説教をくらう素敵な夜でした。


結局のところ、僕も友人と互いを罵っては五十歩百歩で、人生をとぼとぼと牛歩の歩みで進むしかないのでした。僕らが自転車に大胆に跨っては颯爽と立ち漕ぎするような時はたぶん永遠に、来ない。


だからやっぱり、あの子はかっこよかった。


今日も遊びに来てくれてありがとう。

初冬の訪れを感じざるをえない天候に、イリュージョンなのでは?などと、僕の中のプリンセス天功が大暴れ。厚着をしては、地下鉄でぐっしょり汗をかき、人生の大層難儀なことを思い知らされるのでした。羽毛布団が一層恋しい季節ですが、人に恋したいなどとうつつをぬかして今日の備忘録を締めます。

それでは、また明日。


お粗末様でございました。




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