top of page

#スッキリ

  • 執筆者の写真: toshiki tobo
    toshiki tobo
  • 2024年3月30日
  • 読了時間: 3分

品川にあるオフィスビルのトイレでのことです。こちらの意図とは裏腹に、川のせせらぎが間髪入れずに流れ始めました。四方を壁で囲われた半畳にも満たないあの狭い空間で、音姫の響きにうっかりまどろんでしまいました。品川の音姫は一味違うな、とまた一つ学びを得ました。品があります。




高校生の頃、男子トイレにはオトヒメはねえのか?と脅すように尋ねられ、オトヒメ?あ、乙姫。トイレに乙姫(?)、と放課後の書道室で一人悶々と姫違いをしたことがありました。女子トイレにはどうやら乙姫というものがあるらしく、これが音姫という単語との出会いです。初めて目にしたのは、その数年後の、たしか大学1年生の頃です。あれは、そう、思い出しました。御殿場のアウトレットだったと思います。


トイレの個室に入ると、何やらいつもより一つ余計な装置が、ウォッシュレットのリモコンの横に並んでいるのを目にしました。なんだかとんでもなく押したい気持ちに駆られ、人差し指をその装置にグイッと押し当てました。すると、たちまちとんでもない音量のせせらぎが鼓膜を震わせました。驚きと恥ずかしさからすぐさま停止ボタンを押したその時です。もしやこれが、オトヒメ?オトヒメは乙姫ではなく"音"姫だったのか!はっとしました。

ふっ、と力が抜けいつもよりだいぶスッキリしました。




今となっては、どこのトイレにも設置されているマジカル装置、音姫。川のせせらぎや鳥のさえずりで、トイレの個室をアッ(!)という間に癒し空間にアブチェンジ。音姫との出会いは、あまりにも衝撃的で、実のところ、使い慣れるまでに時間がかかりました。この感覚は、そう、あれです。Bluetoothを初めて使った時のそれです。馴染むと呼吸のようになってしまうのですから、慣れって恐ろしいですね。


近年では、さらに、個室の使用状況や混雑状況を知らせるシステムが導入され、個室にモニターまでもがつくようになりました。同時に、この国のトイレ利用に対する問題が表面化されているような気にもなります。滞在時間の長期化、不法占拠、一枚の扉を挟んで繰り広げられる陰湿な報讐の数々。使いたい時に使えない、使うべき人が使えないトイレの多いこと。でも、待ってください。すべての悪の元凶は音姫なのかもしれません。川のせせらぎや鳥のさえずりがいつでも延々と聴けるなら、そりゃまどろんでしまって当然ではないでしょうか。違います。そんな人一人もいません。




僕のように、個室の中でトイレのこととかトイレじゃないこととかを、考えたり考えなかったりなどの余計なことをする人がいるのが問題です。でも、僕は、音姫がいるから平穏な日常を過ごせています。もう少し、せせらぎに耳を澄ませたい。あなたに癒されています。ありがとう、音姫。スッキリ。(キラキラ)







Comments


bottom of page