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#しかたのないこと

  • 執筆者の写真: toshiki tobo
    toshiki tobo
  • 2022年10月24日
  • 読了時間: 3分

更新日:2022年10月28日

秋の夕陽が愁いを帯びて半身を激しく照らす。オレンジのその光は僕を境に長い影を地へ伸ばす。道行く人の誰しもが色のない影を連れて今日も家路につく。綺麗でもあり、寂しくもある秋の夕陽に魅せられて、僕はただただ無心の時間に身をゆだねる。


朝が来て、夜が来る。繰り返される日常にわずかな変化が積み重なり、何かに試されているような気がしている。小さな変化の蓄積は、時に耐えがたく我慢しがたい瞬間をうみ、心にしまった醜い自我を露わにする。人生は自責の念にかられるばかり。しかたのないことをどこまでも引きずっては、二度と来ることのない今日を台無しにしてしまったと、さらに後悔を積もらせるばかり。寝て起きたら忘れる人になりたかった。


遅い夏休みがはじまり実家に帰ってきた。電灯もなく民家も少ない地元の夜は闇のようで、昨日まで見ていた東京の夜とのギャップに心が折れそうになった。音もない静まり返った暗闇の中で風が冷たく頬にあたる。僕の帰省に心を躍らせる両親の顔をみて、くよくよしてもいられないなと思いたち、実家のなかで自分への愛情を探してみた。カレンダーに母の愛情を見たり、朝食を用意してくれる父に愛情を見たりなどをする。また、家中に刻まれた姉や自分の名前を探しては、家中を駆け回った幼少期の温かな記憶を思い返す。弾けなくなったピアノの鍵盤に指を置いては途中で止めてを繰り返し、ふらふらと自室へ戻り、学生時代のノートを見返す。


11月が嫌いだ。もうすぐ嫌いな11月がやってくる。高校3年生の頃の鬱蒼とした記憶が眼前にちらつく。あの頃から僕はちっとも変っていない。この1年にコツコツ積み上げた自尊心は、新月とともに地へ墜ち、心のよりどころのなさを感じては、目頭に涙を集めずにはいられない。元気な時に受け止めた、あらゆるものがあふれ出し、それらが自分をどうしようもないものとせしめている。自分自身がこれなのに、誰かのために生きようとするなんて、60000000年早い。苦手なものを受け入れて、誰かの手を借りながら、また一からコツコツと散り散りになった自我を集めてゆきたい。


高校1年生のころ、自分の上位交換としか思えない人々に囲まれ、ひどく苦しみ心を痛めた記憶がある。いつしか、みんなが僕のアイデンティティを見出してくれ、僕を救い出してくれた。愛だなと感じた。思い返せば僕は幸せ者だったなと感じざるをえない。


少し前に仲良くなった友人が日記やPodcastをやっており、つい昨日から拝見、拝聴をしている。そのところどころに、いつかの自分を重ねたり重ねなかったりなどを繰り返し、間接的に相手の心を感じ取ってみる試みをする。喜びも悲しみも、誰しもに等しく降り注ぐけれども、直接的に窺い知れることなんて氷山の一角に過ぎない。どんな人にも、それぞれの生活圏に隠し持つ美醜があって、大人になるにつれて出す出さないのコントロールに慣れてきただけであることを学んだ。僕は彼には敵わない。端々まで血の通う彼の生き方に嫉妬した。本当に敵わない。偶然にも人生が交差したことに感激すら覚えている。聖人君主のような彼をいつか天から引きずり下ろし、がはがは下品に笑いあげるのが僕の夢。


文字起こしをしていたらなんだか元気が湧いてきた。この帰省は自分のための帰省。なんてったって夏休みなんだ。あややと一緒にめっちゃホリデ~だとか、聖子ちゃんと一緒に夏の扉をあけちゃったりだとかをしなければいけない。何と言われようと正真正銘の夏休みなのだから。曇天にボルテージを抑えつけられてはたまったもんじゃない。ここにドス黒い気持ちを置き去って、足早に青空を駆けあがりたい。


今日も遊びに来てくれてありがとう。

昨晩、家の外へ出てみたら、暗闇の中にいくつもの星々の輝きを見た。同時に瞳の上に光が走った。流れ星だ。氷をあてられたような寒さのなか、僕は夢中で夜空に願いを込めた。

それでは、また明日。


お粗末様でございました。



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