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#それはいつかの南風

  • 執筆者の写真: toshiki tobo
    toshiki tobo
  • 2022年6月8日
  • 読了時間: 3分

眠りに落ちて、その心地よさに幸せを感じる。

ああ、今日はいい日だったな、と。

でもその日はあまりにも一瞬で、夢のようだった。

アレ?どっちが夢?


お姉ちゃんが結婚式を挙げた。

お姉ちゃんが、結婚したんだ。

僕のお姉ちゃんが。


婚姻は確か昨年だった。

挙式はその後すぐの予定だった。

でも、延びた。コロナだったから。


僕はなんともないと思ってた。

結婚式をあげようが驚きはしない、て。

この1年で心の準備は十分できた。


でも、当日はとっても寂しかった。

日本の結婚式って、

婚姻して2人が結ばた歓びを祝福する側面よりも

親元から離れ別の家族を形成するということに

焦点が当てられているような気がする。

海外の結婚式にでたことなんてないんだけどね。


だから、お姉ちゃんが遠くに行ってしまうような気がして

僕はとても寂しかったんだ。


長らくお姉ちゃんとは疎遠だった。

それは僕が頑固だったから。


小さい頃に抱いていた鬱憤を高校生のころ爆発させた。

それ以来顔を合わせることなんて片手程。


結婚の話があって、そこから距離が近くなった。

これは過去の備忘録で何度か文字に起こした。


でも、やっぱり血の繋がりって

こころの繋がりだと思うこともしばしばで

家族は僕の構成要素の一部であると

なんとなく感じることがあるんだ。

最近はお姉ちゃんと話すことが楽しい。


だから結婚式もとても楽しみにしていた。

夫になる享くんは本当に素敵な人で

そんな人の妻になるお姉ちゃんを当日は誇らしく思った。


僕はついつい、幸せをピンクとかオレンジで

表現しがちなんだけど、

やっぱり、その日も、カシオレみたいな幸せが

空間いっぱいに広がった。


1日が一瞬で、それはまるで、夢だった。

不思議で、不思議で、ただただ不思議な時間だった。


就活生のころ、東海道線によく揺られていた。

小田原の海を眺め、人の少ない車両の中で

ぼぅっと電車に揺られていた。

梅雨明けの暑い夏日のことだった。


車内は少し肌寒いくらいに冷房が効いていて

僕は日差しの強さに目を細めていた。


停車駅で電車のドアが開く。

開くと同時に夏いっぱいの柔らかい南風が

車内に押し入ってくる。


丸みを帯びたその風は

大きな大きなシャボン玉のように

僕にぶつかり、そして弾ける。


突然のできごとに僕は目を見開き

えも言えぬ心地よさを全身で感じる。


ほんの一瞬のこと。

電車が動き出すと、僕はまた

少し肌寒い車内で目を細めて海を眺める。


結婚式で相見えた一瞬の驚きと心地よさ。

それはいつかの南風のようだった。


現実の中に突如訪れる、不思議な一瞬。

こういう経験があと幾度あるんだろう。


欲しがってはだめだね。

突然だからきっといいもの。


お姉ちゃん、享くん、おめでとう。

きっと、ずっと、幸せだよ。

おめでとう。


今日も遊びに来てくれてありがとう。

親戚のおじちゃん、おばちゃん、

従姉妹のお姉ちゃん、それからお姉ちゃんのお友達

たくさんの人との再会にも心が踊った。

モーニングに袖を通したお父さんは

なんだかとても立派に見えたし、

黒留袖を召したお母さんはとてもきれいだった。

奇跡的に晴れた当日にハレの日を迎えられたことを

僕は心から嬉しくおもった。

家族にはずっと幸せでいてほしい、ね。

それでは、また明日。


お粗末様でございました。







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