#ふんわり感じたこと
- toshiki tobo
- 2023年12月18日
- 読了時間: 3分
『しゃっくり百万べん』という本を書店でみかけました。なつかしく児童文学を手にし、100回しゃっくりをしたら死ぬ、という迷信を思い出しました。同時に、GLAYは100万回のKISSだったな、と遠い函館にふんわり想いを馳せました。
しゃっくりのギネス記録は68年間という記事を読み、回数ではなくもはや年数で数えられていたことに驚きました。しかも1分間に20〜40回という凄まじいハイペース。単純計算でも生涯で軽く7億回を超えるしゃっくりをしたことになります。記録を出したのは当時96歳のアメリカ人男性。その方は、しゃっくりが止まった約1年後に病気で命を引き取ったとのことです。しゃっくりは彼にとっての正常な働きだったのかもしれません。
帰省のたびに自室の本を東京の自宅に少しずつ持ってきています。多くは大学生時代に買い集めたもので、読み返してみると当時とは異なった印象をもつこともしばしばです。高校生時代の国語の便覧、世界史の資料集なども、最近東京の自宅へ持ってきました。
しかし、同じようにできずにいる本があります。『ノルウェイの森』です。読んだのは大学4年生の頃だったと思います。僕にとって手に取った唯一の村上春樹作品です。読んだ当時、物語のそのあまりにも湿っぽく、陰険な描写に胸を抉られるような気持ちになりました。代表作と言われる本だからこそ、村上春樹という人はこういうものを書く人なのか、とレッテルを貼り、彼の書籍を遠ざけていいました。なぜ、これほどまでに評価されているのかまったく理解できませんでした。
海外の友人から、村上春樹が好き、という声を耳にします。きっと日本人の僕に対する優しさ、あるいは親しみをこめて、そう言ってくれるのだと思うことにしています。彼ら/彼女らの優しさに応えるためにちゃんと読み返そうとしながらも、なかなか表紙をめくれずにいるのが正直なところです。
少し前、偶然にも、Podcast番組「夜ふかしの読み明かし」にて、『ノルウェイの森』の読書会が数回に分けて組まれていました。その中で、同作で村上春樹を嫌いになったという発言があったことで、なんとなく安心感を覚えました。
しかし、後半回では、読み返してみると本当によくできた作品ということが、出演者の口からこぼれていました。そもそも、子供に毛の生えたような当時の僕には、内容のことなんてちっとも理解できるはずもなかったのです。今ならもう少し、言葉に振り回されずに物語に没入できるのないかとちょっとした希望をもっています。次回の帰省の際、あの赤と緑の上下2冊に勇気を出して手を伸ばしたいと思います。
認知の歪みというものは、大小かかわらず誰もに訪れる経験だと思っています。それを正せずにいると卑屈になったり、自虐に走ったり、よくない方向へ進んでしまいます。大事なのは本質を見極める洞察力とそれを受け入れる勇気ではないか、と最近は考えています。
しゃっくりが68年続いた人を「辛かったろうに」と第一に思った自分は、ノルウェイの森を読んだあの頃の自分と全然変わっていないことを、ふんわり感じた年の瀬でした。
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