#ふと思い出したこと
- toshiki tobo
- 2022年11月7日
- 読了時間: 3分
更新日:2022年11月8日
「あなた」という言葉には良くも悪くも相手に対する強い意志を感じます。一筋に延びる強い意志。僕にとって「あなた」という言葉は少しばかり特別で、使うことは多くはありません。親しい友人にのみ使用する呼称です。あくまで、僕が使用する場合です。
しかし「あなた」という言葉は恋しく思う相手に対してしばしば用いられます。他の言語ではさして特別の意味のない「あなた」という言葉ですが、日本語においてはなぜだか特別な言葉のように感じます。
「あなた」というタイトルの楽曲を2つ知っています。そのどちらも大切に想う相手に向けて「あなた」と呼んでいます。楽曲を聴くと、大変まっすぐな気持ちとまなざしが「あなた」へと向けられていることを強く感じます。「あなた」という言葉を使用することで、2人の間がとても近いことが表現されているようにも感じます。しかし、どこかほころびを匂わせ、相手の姿が見えているのか不安にさせます。とても素敵な楽曲ですが、少し杞憂に思うのは僕だけでしょうか。
話は変わりますが、フォーマルハウトという名の星をふと思い出しました。小さなころ、確か小学4年生頃の話です。夏休みの終わり、父親にお願いをして夜空を見に出かけました。小学校でもらってきた星マップなるものを片手に、父親の運転する軽トラックの助手席に座り、ワクワクしながら山へ登ってゆきました。僕はどうしてもフォーマルハウトが見たかったのです。
田舎の地元では少し標高の高い山に登ればすぐに夜空が近づき、眩い光できらめく星々を手の届きそうな位置に確認することができました。しかし、どんなに夜空を探してもフォーマルハウトを見つけることができません。お父さんは僕のわがままに付き合い車を走らせます。1~2時間は探していたと思います。途中で僕はうとうととまどろみ始め、知らずの内に眠りに入ってしまいました。お父さんに肩を揺すられ目を覚ますと、山のだいぶ高いところまで来ていました。無数の星々が弾けんばかりに輝く夜空が、覆いかぶさるように頭上に広がり、それはそれは美しかったことを今でも覚えています。
しかし、それでも僕はフォーマルハウトを見つけることはできませんでした。その時の僕は見つけられなかったことを残念に思うより、眠くて眠くて仕方がなくて、満天の星に満足し、ふたたびまぶたを閉じました。手の届きそうなところに、あれほど多くの星があったのに、どうして見つけられなかったのか、今でも不思議です。
「あなた」と「フォーマルハウト」は少し似ているような気がしました。近づけば近づくほど、見えなくなってゆく、あるいは離れてゆく。それだけを見ようとすると、結局のところ見失ってしまうよう。そのようなことを僕は感じました。そればかりを求めても結局は手に入らない、あるいは見つけられないことの教訓のように今は思います。
今宵も秋の星々が輝いています。今ならフォーマルハウトを見つけられるかもしれません。

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